現代社会の日常生活において、コンピュータ技術は様々な場面で導入されています。
医療の現場においてもこれは例外ではなく、診断と治療の過程において使用される様々な医療機器にコンピュータ技術が導入されています。
整形外科手術用にもコンピュータ技術を使用した「手術用ナビゲーションシステム」という最先端の医療機器が開発され、日本でも導入が進んでおります。
大腿骨レジストレーションの様子
手術用ナビゲーションシステムは、GPSなどを使用して自動車の位置を検出するカーナビゲーションシステムと似た原理で器具の位置を画面に表示します。カーナビゲーションの場合、人工衛星の電波から現在の位置を割り出し、搭載された地図上にリアルタイムに表示します。
手術用ナビゲーションシステムの場合は、人工衛星の電波ではなく、カメラからの赤外線を使用して患者様や手術器具の位置を検出します。
カメラから赤外線が発光され、患者様や手術器具に取り付けられたボールに反射し、再びカメラがその反射光を受け取ります。
この結果から器具の3次元的位置を計測し、リアルタイムに画面に表示して手術の支援を行います。
人工膝関節置換術においては、手術用ナビゲーションシステムは患者様の膝関節と手術器具の位置を検出し、それらがお互いどのような位置関係にあるのかという情報を主に表示します。
手術用ナビゲーションシステムを使用すると、例えば骨を切る際に、手術器具が対象となる骨のどの位置にあるのかという情報を数値化して表示し、処置の結果をその場で確認する事ができます。
加えて、膝関節を構成する大腿骨と脛骨がどの様な位置関係にあるのかという点も確認する事ができます。
人工膝関節の長期安定には、正確な下肢アライメントの再現が不可欠とされています。手術用ナビゲーションシステムは、アライメントを数値の情報で提供する事で手術を支援します。
また、術前の状態を記録しておき、改善状況を手術中に確認する事も可能です。
ナビゲーションシステムについての概要はお分かり頂けたでしょうか。下記の画像は、実際にナビゲーションシステムのモニターに表示される画面例です。苑田会人工関節センター病院では、この画面を確認しながら高い精度の手術を行う事が可能なドクターがいます(画像をクリックすると拡大されます)。ひざの痛みはぜひ当院にご相談下さい。
ナビゲーションで患者様の膝の位置を正確に検出するためには、赤外線を反射するアンテナを骨に取り付けなければなりません。
金属製のピンを直接骨に刺すため、ピン用に皮膚切開を追加するか大きくする必要がありました。
ピン用に皮膚切開を追加するか大きくする必要があるため、MIS人工膝関節置換術の技術と両立させにくい、という課題がありました。
当センターでは、「ピンレスナビゲーション」の器具を使用することにより、この課題の解決に取り組んでいます。
「ピンレスナビゲーション」では、MISに対応できる様に器具を変形させました。最小限の皮膚切開でもアンテナが皮膚をまたぐ様に設置する事が可能です。追加の皮切を必要としないので、当院で行われているMISに対応する事ができるようになりました。
加えて、従来のピンの代わりに小さなプレートとスクリューを使用することで骨への侵襲を少なくする事も目的としています。ピンの場合、固定力を保つためには深く刺入する必要がありますが、その際に発生しうる誤刺入のリスクも回避する事ができます。